聖地巡礼 峠茶屋

衰微した日本の霊性を再生賦活させる内田樹先生・釈徹宗先生による「聖地巡礼ツアー」に参加している巡礼部および関係者によるブログ。ロケハンや取材時の感想などを随時お伝えしていきます。

ロケハン、どうでしょう?(5)

第5回目 長崎巡礼
~奇跡の風景~

 

〇ひとり巡礼、アゲイン
 さて、第5回目となる長崎の隠れキリシタンをめぐる巡礼は、初めてキリスト教がテーマで、飛行機を利用するなど、初物づくしの巡礼となる予定です。ですから、準備は万全にしておきたいもの。
 しかし、まさかの前日に相棒からメール。「家族に不幸がありましたので、行けません」。
 がび~ん。まさかのひとりロケハン・アゲイン。
 しかし、今回は巡礼部の方のご紹介で、ロケハンにも地元でライターをしている下妻さんに案内をしていただけることになっていました。相棒がいない分、強力なサポーターを経て、いざ長崎へ。
 長崎空港では、ナビゲーターの方が、こんなものまで用意してくれていました。恥ずかしながらも、ちょっとうれしかったです。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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〇行くか、行かぬか五島列島
 今回の巡礼取材も、1泊2日を予定していますが、ロケハンは2泊3日と1日多い日程を組んでいます。もちろん、できるだけ多くの土地を見て訪問地を判断するのですが、今回の大きな目的は「五島列島に行けるか否か」。
 五島列島はまさに隠れキリシタンの「聖地」なのですが、隠れキリシタンをめぐるスポットが点在する長崎市内や外海などをスキップしてまで訪れるべきか、時間はあるか、巡礼部の方を受け入れられる宿泊施設はあるか、など、こればかりは行ってみないとわかりません。
 結論から言うと、行くことはむずかしい、と苦渋な判断をすることになりました。ただ、やはり五島はすごい。そんな噂はほんとうでした。

〇「西方浄土」はあったか
 日本には「西方浄土」という思想があります。言うまでもないことですが、西の彼方に極楽浄土がある、という思想です。沖縄などを除くと、晴れた日には長崎の稲佐山から見える五島列島は、息をひそめて内側に秘めた信仰を守っていた隠れキリシタンには、まさに「そのような土地」に見えたはず。
 ナビゲーターの方と別れ、フェリーで1時間半ほどの距離にある上五島は、そんな浄土のイメージとはほど遠い場所でした。
 後で聞くと、五島列島でも南のほうは比較的平地が多いようなのですが、レンタカーを運転していると、上五島は海岸に山が迫っていて、そのわずかな土地が続いていることがわかります。
 当然ですが、平地には元から住んでいる住民がいて、追われてきた隠れキリシタンは、そんな「恵まれた場所」に住むことはできません。
 とくに、頭ケ島教会(重要文化財)のある頭ケ島は、そのなかでも江戸時代まで無人島でしたが、その最初の住人は本土を追われた隠れキリシタンでした。西方浄土の思想がある日本の西の最果ての島が迫害されたキリシタンが住まざるを得なかった場所で、さらにそこにも迫害の手が伸びていた……。

〇奇跡の風景
 ただ、頭ケ島教会はほんとうにうつくしい。小さな小ぶりの教会の前には、白い砂浜が広がり、その先には穏やかに波が打ち寄せています。その脇にはキリシタン墓地があり、やや壊れかけてはいるものの、地元の方がしているのでしょうか、きれいな花がきちんとたむけられています。
 こんな風景に僕は出会ったことがありません。ほんとうに「奇跡の風景」です。なにか、人間の中のありったけの良心のようなものをキャプチャーして切り取ったような光景でした。

 

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頭ケ島教会前のキリシタン墓地から海岸を眺める


 行きにくいです。私が行ったときは雨が降っていたこともあり、正直、暗い印象しかありません。
 ただ、ほんとうに一度でいい、そんな風景を見に行っていただければと思います。(釣り人の聖地だけあって、魚もほんとうにおいしかったです!)

 それ以外も、下妻さんに懇切丁寧に解説していただき、さまざまな可能性探ることができました。
 正直、隠れキリシタンをめぐる話は暗い話が多く、救いがあまりありません(はじめて、これはだれかが「何かをもらってしまうと危ない」という判断する場所さえありました……)。
 最後の終わり方をどうすればいいのか、東京に帰ってきてらもいろいろ悩みましたが、とりあえずうまい落としどころを見つけらました。
 今回は、まさかの「聴覚」。これは、実際の書籍ができてからのお楽しみ。
 それにしても、実際の取材も含め、下妻さんには大変お世話になりました。改めまして、ありがとうございました!それにしても、たのしかった~。