聖地巡礼 峠茶屋

衰微した日本の霊性を再生賦活させる内田樹先生・釈徹宗先生による「聖地巡礼ツアー」に参加している巡礼部および関係者によるブログ。ロケハンや取材時の感想などを随時お伝えしていきます。

No.15 聖地でおにぎり

 さて、『聖地巡礼ライジング:熊野紀行』が発売されましたが、以前、「いまに続くモノ」と題してご投稿いただきましたAmano_Jokeさんが、熊野についてご投稿いただきました。なんと、舞台は神倉神社です。ぜひ、ご高覧ください!

聖地でおにぎり(Amano_Joke)

世界遺産にも登録され、誰もが知っている熊野。「私だけ」の聖地ではありません。いろんな方が、いろいろ表現されており、そして、私自身も熊野に行っているのに、いまだに、熊野はこんな所、というはっきりした言葉にすることができません。
混沌としていて、生命というか、なにかのエネルギーの最初の場所であり、道の途中で厳しく歩く所であり、ヒトが亡くなって行き着く場所でもあるように思えます。そして、誰かにちゃんとした言葉で伝えることが、いまでもできないのです。
だから、今回の聖地巡礼峠茶屋のテーマにのっかって、「聖地巡礼ライジング:熊野紀行」の出版もあるという、この時期に畏れ多いのですが、できたら、そのひとつでも言葉にできれば、と思いました。
熊野には、いままで一度も行ったことがありませんでした。何度か計画をたてたのですが、プランの途中であきらめたり、近くまで行ったのに行かなかったりしたので、これはもう、呼ばれるまで仕方ないや、とあきらめていました。
全国どこにも高速道路ができて、新幹線はカップラーメンができるくらいの時間で東京駅を出発するこのご時勢に、東京から行くと、現地につくまで半日はかかります。ですから、ちょっと、仕事おわりに行ってみるというわけにはいかないのが、熊野でした。
ところが、なんとか連休がとれて、しかも、いろいろと条件がそろって、やっと行けることになりました。
行きたい場所はいくつかあったのですが、神倉神社に登るというのも、目的のひとつでした。
前の日に熊野へはいって、朝イチで登りました。
最初の鳥居。ここからみると、神社の階段にみえます。むしろ、東京の愛宕神社の出世の階段の方が怖いや、と思っていました。

f:id:seichi_jyunrei:20150316223042j:plain

ところが、とんでもありませんでした。ごめんなさい。途中、なかば両手をついて、這うようにしてやっとのことで登りました。
これは帰り道に、撮影。行く時は、写真なんて余裕はなかったです。
上からみると、高さがよくわかります。

f:id:seichi_jyunrei:20150316223117j:plain
オバハンがひいひい登っていると、後ろから子どもの声が聞こえました。
なにか、話しながら近寄ってきたな、と思ったら、ひょいひょいと、二人の男の子が追い抜いていきました。
おお、地元の子どもはすごい。

f:id:seichi_jyunrei:20150316223144j:plain
途中、お花に励まされながら、そして、杖をたよりにして、息もだえだえにやっと、頂上。
頂上は、おおきな1枚の岩になっています。さらに、その大きな岩の上がお社です。ご神体のゴトビキ岩が見えます。

f:id:seichi_jyunrei:20150316223218j:plain

参拝しました。
お社の下からでさえ、見あげる大きさ。しかも、朝日があたってどん、という音さえ聞こえるようです。石の圧倒的な存在。神という言葉が適当なのか、よくわからないくらいの力です。お社のうしろゴトビキの岩も、軽々しく入れない場所です。
すごいな、ここ、と思っていると、また、子どもの声。
さっきのお社が載っている大きな1枚の岩をすべり台にして、さっきの子ども達が遊んでいます。

f:id:seichi_jyunrei:20150316223553j:plain

すべり台、といっても階段やロープがついているわけじゃないので、すべっては、また走りあがって、というのを何度も繰り返しています。
しばらくは、その場にいました。お社の前からは、新宮の街と太平洋が光っていました。

f:id:seichi_jyunrei:20150316224113j:plain

あれ、子どもの声がしないな、と思ったら、さっきすべり台にしていた岩の上のお社の前で、おむすびを食べていました。
朝ごはんなの?
「ううん、ちがう」(方言で言われたのですが、よく書けません。ご容赦ください)
違う?遊びにきたの?
「ちがう。牛乳買ってきてって、おかあさんに言われた」
牛乳?
「その途中なの」
寄り道なんだ。もちろん、神社に牛乳は売ってませんし。
しかも、おにぎりまで持ってるから、公認の寄り道。
たぶん、小学校1年くらいと、3年くらいの兄弟です。
天気がいいねえ、とか学校楽しい?とか、少し話して気がついたのですが、下の子は首から携帯電話をさげています。
ということは、携帯が操作できるということなので、ねえ、写真とってくれる?とお願いして、カメラで記念写真をとってもらいました。
じゃあ、この(子どもの持っている)携帯電話で写真、とってあげようか?
「いい」
そう?と携帯をみると、苗字と固定電話の番号が、携帯のうらに、マジックで書いてありました。
「これ、死んだら、ここに連絡するように、ってお母さんに言われた」
死んだらなんだ。
死ぬ前に、なんとかするんじゃないの?と思いましたが、ああ、そうだね、死んだら連絡しないとね、と言いました。
しばらくして、おにぎりを食べ終わったあと、二人はまた、跳ねるように降りていきました。
私は、そのあと、最後にお礼をして、神社をおりました。

f:id:seichi_jyunrei:20150316224048j:plain
神社の下のベンチで、膝を慰めていると、おじいさんから話しかけられました。お掃除をされているそうで、ナギの実をもらいました。若い男性もいて、さっき悲鳴をあげて登った階段を整備されているそうで、土をかついで登っていかれました。子どもがいて、大人がいて、大切な暖かい場所だなあと思いました。
でも、家に帰って思いだすと、神倉神社で会った子ども達が、なんだかこの世の子ども達とも思えないような、不思議な存在だったなあ、と感じました。
それから、おじいさんからもらったナギの種は、土から芽がでませんでした。
また、行って木にする方法を教えてもらいに行きなさい、ということかもしれません。
その時には、また牛乳を買いにくる子どもに逢えるのかな。
・・・
Profile
Amano_Joke:みっちりした医療関係の仕事をしながら、パワースポットによく行っております。4年連続して夏休みは奈良、ということもありました。
・・・
「ちょっと、仕事おわりに行ってみるというわけにはいかないのが、熊野」というくだりがありますが、だからこそ、はまる人はほんとうにはまるんです(管理人もそうです)。私は個人的に神倉神社に登ったときは、ゴトビキ岩の前で、体操しているおじいちゃんがいました(笑)。Amano_Jokeさん、ありがとうございました!では、まだまだご投稿、おまちしております!(というか、締切をさせていただいた3月末ってもうすぐですね…)よろしくお願いいたします!(管)